ダイヤモンドはいつできたのか?
前回の記事では、ダイヤモンドが「炭素の結晶」であり、地下150〜200kmという極限の環境でしか生まれないことをお伝えしました。
では、その結晶化は「いつ」起きたのでしょうか。
答えは、10億年以上前です
天然のダイヤモンドのほとんどは、10億年〜35億年前に形成されたことがわかっています。
10億年という数字を、少し別の角度から見てみましょう。
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人類の歴史:約300万年
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恐竜が絶滅したのは:約6600万年前
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地球が誕生したのは:約46億年前
10億年前には、地球上にまだ複雑な多細胞生物すら存在していませんでした。私たちが「生命」として思い浮かべるものが地球に現れるより、はるか前の話です。
そして「10億年前」は、実はダイヤモンドの中では最も若い部類です。多くは20億〜30億年前、最古のものは35億年前のものが確認されています。
地球上には、もっと古い鉱物がある
ここで正直にお伝えしたいことがあります。
「年齢」という観点だけで見ると、ダイヤモンドより古い鉱物は存在します。
ジルコンという鉱物は、オーストラリアのジャックヒルズで44億年前のものが発見されています。地球の年齢が46億年ですから、地球誕生からわずか2億年後にはすでに存在していた計算です。
さらにモアサナイト(炭化ケイ素)という鉱物は、隕石の中に含まれる粒子として約70億年前のものが確認されています。これは太陽系そのものの誕生(約46億年前)より古く、かつての恒星の周りで生まれた「星屑」とも言えるものです。
年齢だけで言えば、モアサナイト>ジルコン>ダイヤモンドという順序になります。
では、ダイヤモンドは特別ではないのでしょうか。
ダイヤモンドが特別である理由
そうは思いません。ダイヤモンドの特別さは「年齢の古さ」ではなく、何を、どのように保存しているかにあります。
モアサナイトはそもそも地球の外、宇宙で生まれた鉱物です。地球の話ではありません。
ジルコンは地球の鉱物ですが、その保存には「運」が伴います。ジルコンは自分自身の結晶の強さで記録を守っています。しかし長い時間の中で地球内部の熱や変動にさらされると、記録が乱れることがあります。44億年前のジルコンが今日まで残っているのは、そういった出来事をたまたま免れた、例外的な生き残りです。
ダイヤモンドの守り方は、根本的に違います。
ダイヤモンドは結晶化するとき、ごく小さな別の鉱物を内部に丸ごと取り込みます。これを内包物(インクルージョン)といいます。そしてそれを、世界で最も硬い物質でできた「容器」として、完全に外界から遮断します。
中のものは外に出られない。外のものは中に入れない。
後から地球内部でどんな変化が起きても、ダイヤモンドという容器が壊れない限り、中の記録は手つかずのまま保たれます。ジルコンが「石自体の強さ」で記録を守るのに対し、ダイヤモンドは「容器ごと封じ込める」という、まったく別の方法で守ります。
なぜ「いつできたか」がわかるのか
ダイヤモンドは純粋な炭素でできているため、ダイヤモンド自体を直接測定しても年代はわかりません。
手がかりになるのが、内部に閉じ込められた内包物です。
自然界には、時間が経つと別の種類の原子へ少しずつ変わっていく原子が存在します。そしてその変化の速度は、どんな環境でも絶対に一定です。熱くなっても冷えても、圧力がかかっても、変わらない。これが「自然の時計」です。
内包物がダイヤモンドに閉じ込められた瞬間、この時計が動き始めます。以来、内包物の中では原子の変化が少しずつ進んでいきます。ダイヤモンドの壁がある限り、その変化の記録は外に漏れることなく蓄積され続けます。
今日、精密な機器でその「変化の割合」を測れば、時計がスタートしてから何年経ったかが計算できます。それがダイヤモンドの年齢です。
時計は止まらず動き続けてきた。そして針が一つも失われていない。だから正確に読めるのです。
ダイヤモンドが届けるもの
年齢の古さだけを競えば、モアサナイトには及びません。ジルコンにも及ばない場合があります。
しかし、ダイヤモンドが届けてくれるものは唯一無二です。
地下150〜200kmという、人類がいまだかつて到達したことのない地球の深部。そこで10億年以上前に生まれた記録を、ほぼ完璧な状態で地表まで運んでくれる鉱物は、ダイヤモンドをおいて他にありません。
私たちが手に取るダイヤモンドは、地球の最も深い場所からの、最も古い、最も正確なメッセージです。
ANOTHER DIAMOND 北川大輔