人工ダイヤモンドの時代に、天然ダイヤモンドを語る意味
先日、都内で開催されたジュエリーの展示会に足を運びました。その中で、ラボグロウンダイヤモンド(人工ダイヤモンドとも呼ばれます)に関するセミナーがあり、話を聞きながら、自分がこのブログを書いている理由が、あらためてくっきりと見えた気がしました。
セミナーで聞いた、一つの重要な視点
セミナーに登壇したのは、日本ラボラトリーグロウンダイヤモンド協会と、国際宝石学研究所(IGI)の方々でした。
話の中で、印象的な言葉がありました。
「ラボグロウンダイヤモンドと天然ダイヤモンドは、競合するものではない。それぞれが異なる市場を作り出していくものだ。」
この言葉は、ダイヤモンド業界に関わる人間として、深く共感できるものでした。
現在、日本でラボグロウンダイヤモンドを知っている消費者は約7%とのことです。一方、中国やアメリカでは認知率はさらに高く、実際の市場規模もすでに日本の何倍にも達しています。他国の事例を見れば、今後日本でもラボグロウンダイヤモンドのジュエリー市場が成長していく可能性は高い。それは業界全体が感じていることです。
二つの市場が並び立つとき、何が起きるか
では、ラボグロウンダイヤモンドと天然ダイヤモンドが、それぞれ別の市場として成立していくとき、何が起きるのでしょうか。
一つ、確実に言えることがあります。
天然ダイヤモンドには、「価格」と「4C」以外の価値を語れる声が、もっと必要になる。
4Cとは、ダイヤモンドの品質を評価するための国際基準です。カラット(重さ)、カラー(色)、クラリティ(透明度)、カット(研磨の質)の4つで、宝石店に行けば必ず目にする指標です。ダイヤモンドの価格は、この4Cによって大きく決まります。
ラボグロウンダイヤモンドは、4Cで評価すれば天然ダイヤモンドと同等、あるいはそれ以上のものを、低い価格で提供できます。化学的な組成はまったく同じです。輝きも変わらない。
だとすれば、天然ダイヤモンドの価値は、4Cとは別の場所にあるはずです。そしてその価値を言語化し、伝えていく役割を担う人間が、業界にはまだ圧倒的に少ない。
私はセミナーを聞きながら、そのことを強く感じました。
ANOTHER DIAMONDが語ろうとしていること
このブログを始めた理由は、まさにそこにあります。
私の手元には、天然ダイヤモンドの原石があります。磨かれる前の、地球の深部から出てきたままの姿のものです。私はそれを見て、触って、観察します。自分で研磨することもあります。
これは、一般的な宝飾品の販売の現場ではほとんど起こらないことです。多くの場合、消費者が目にするのは研磨・カットされた完成品のダイヤモンドであり、その石がどこから来たのかを実感できる機会はほとんどありません。
私がこのブログで伝えようとしているのは、ダイヤモンドという石が本来持っている魅力です。実際に手元にある現物を見て、触れて、観察することで見えてくる事実と、そこから分かることです。
地下150〜200kmという、人類がいまだかつて到達したことのない深さで生まれること。10億年以上前に結晶化し、その時間をそのまま内部に刻んでいること。内部に閉じ込められた鉱物粒子が、地球の歴史を今日まで届けてくれること。
これらは、4Cには現れません。鑑定書にも書いてありません。しかしそれらは確実に、その石の中に存在している事実であり、原石と向き合うことで初めて実感できる魅力です。
「どちらがいい」という問いの先へ
ラボグロウンダイヤモンドか、天然ダイヤモンドか。どちらを選ぶかは、消費者一人ひとりが決めることです。それは価値観の問題であり、用途の問題でもあります。
私はどちらが正しいかを主張したいわけではありません。
ただ、天然ダイヤモンドを選ぶ人が、その石の何を選んでいるのかを、もっとよく知ってほしいと思っています。価格や輝きだけでなく、地球の深部から届いた時間の重さを。10億年という、言葉にしても実感しにくい尺度を。その石が持つ、地質学的な事実としての歴史を。
ANOTHER DIAMONDというブランドが目指しているのは、そのような意味でのダイヤモンドの語り手になることです。
ANOTHER DIAMOND 北川大輔